というタイトルと同じ質問を若手起業家に聞いたことがある。どの方も時代の波に乗りまくって活躍されている各分野の30代、40代の起業家ばかりだ。その方々に世界一、古い企業をご存じですか、またその企業はどこの国にありますか、と質問したが正解者はいなかった。ちょっと意外だった。
もちろん、老舗という言うからには現存していることが条件だ。
国柄から考えて歴史が長いとは言え中国には古い企業は残りにくい。それは権力者が頻繁に変わっている事情もあると思う。あとは、ヨーロッパ。ギリシャ辺りなら、古い企業はかなりありそう。あとはエジプト、インドと、イメージではそんなところだろうか?
では、実際、世界でもっとも古い企業は?
これは日本人にとって灯台もと暗しの問いかけなのだ。
企業の寿命は平均でたった20年
これは企業家ならどなたもご存じだ。企業の殆どは20年以内に社会からその存在は消滅する。敢えて倒産させて新しい会社を創設するなど、様々なパターンはあるとは思うが、実際、平均したところ20年ほどになるらしい。
とくに近年、社会や経済の情勢が目まぐるしく移り変わるので、そこに少しでも対応が遅れれば会社は倒産してしまう。一時は隆盛を誇った日本の電機メーカーも、あっと言う間に衰退していったのは記憶に新しい。
とくに多くの従業員を抱えたメーカーなどは、突然起こる時代の変化に、即対応できない。時代の先読みは難しいからこそ、企業を先導する者の力量が問われるところだ。
アメリカのGAFAと呼ばれる企業の創業者たちは、まさにこの点で優れている。いまは一握りの天才たちによって時代が創られている気がする。彼らが創り上げた企業はこの先、何年持ちこたえるのか?それも見所ではある。
では、日本で一番古い企業は?
さて、話は余談になったが本題に戻る。その企業家たちに日本で一番古い企業はご存じですか?と訊ねてみた。これはさすがにご存じの方もいた。もちろん、知らない方も。
答えは【金剛組】だ。皆さんが金剛組をご存じなのは、数年前にニュースになったこともあるだろう。平成18年(2006年)に経営危機に陥り、倒産の寸前までいったが、高松建設が出資したことにより、再出発に至った。これはニュースで大々的に報じられたから、多くの人が見聞きしたと思う。
金剛組は西暦578年(敏達天皇7年※この時代はまだ元号がない)に創業。四天王寺を建立するために聖徳太子が百済から宮大工の金剛重光を招き、創業した。創立1,442年という驚異的な企業だ。いまも、大阪の四天王寺の側、谷町筋にデカデカと看板を掲げている。もちろん、日本で一番古い会社だ。ぼくの知り合いの会社がこの隣りにある。余談だが。。。
世界で一番の老舗企業がある国は、ここニッポン
日本最古であると同時に、実は世界で一番の老舗企業もこの【金剛組】なのだ。世界広しと見渡してみても、金剛組よりも古い企業は存在しない。
ヨーロッパで一番の老舗企業はオーストリアのザルツブルグにある【シュティフツケラー・ザンクト・ペーター】というレストランだ。レストランとしては世界最古。創業は803年。老舗としては世界的に由緒正しい古参企業といっていい。
もう、お気づきだと思うが、金剛組の創業との差が圧倒的。200年以上の開きがある。西暦500年〜700年代に創業して残っている企業は世界には存在しないのだ。さて、ここからの話がますます面白い。
日本が凄いのは実はこれだけでない
世界で一番古い企業が日本にある、そりゃ凄い、と驚いているだけでは、まだまだだ。
実は凄いのはそれだけではない。日本という国は自国のことを教えない風習が戦後あたりから強くなる傾向にあり、日本人が日本のことを知らないことが多いが、西洋では知られていたりする。
若い日本の起業家たちが昨今の日本はもうダメだ。日本はオワコンだ、などと囃し立てるが、彼らの多くは、いまから未来のことは確かによく見通しているが、多くの者が歴史を知らない。企業を育てていくには、もっと大きな視点も持つべきだと思う。なぜなら、歴史は繰り返されるからだ。この現象世界の理を知ることは本当に大切なこと。
世界の老舗企業の8割が日本にある会社
実は世界の老舗企業と呼ばれる中で、その8割が日本に存在しているのだ。これはあまり知られていない事実のひとつ。
例を上げよう。
慶雲館[旅館]山梨 705年創業
古まん[旅館]兵庫 717年創業
法師[旅館]石川 718年創業
源田紙業[紙業]京都 771年創業
と上記の企業の創業年数を見て欲しい。日本を除けば、世界で一番古い企業は[シュティフツケラー・ザンクト・ペーター]だが、創業は803年。それよりもさらに100年ほど古い会社が日本にはこれだけ存在するのだ。
実際、世界の古い企業の順位ベスト5は日本の会社が占める。これは驚きではないだろうか。
例に挙げた企業はいずれも創業1,300年を超えているのだ。
日本には創業1,000年を超える企業はまだ7社もあり、500年は32社、200年だと3,000社以上。
これを世界に照らし合わせると、創業200年の会社は世界規模で見ても5,500社(日本も含む)ほどだという。
極東の島国に老舗企業がひしめき合っている。
この数字から見ても、世界の老舗企業の8割が日本にあるのがよく分かる。
老舗企業の数でも圧倒的なわけだ。
ちなみに、冒頭で企業の寿命は20年と書いたが、さらに驚くべきことに日本には創業100年の会社が3万数千社もある。この数も世界では異例。これだけの老舗会社が存在するのは日本の古くからの風習や習性が関係しているらしいのだが、今回はその説明は省く。
とにかく、長い目で見れば、日本はまだまだオワコンとは言い切れない。数知れず訪れる世界的な不況の波を何度も何度も乗り越えて、これからも強くたくましい企業を生み出す国であって欲しいと願わずにはいられない。
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